活動記録
公開講演会、オンラインセミナー、学会発表など
2022年9月13日
オンラインセミナー クララ・ハン氏講演会 "Household events: Police, neighborhood, and textures of violence"
- 【日時】2022年9月13日(火)午前9:30-11:30(日本時間)
- 【開催形態】Zoomによるオンライン開催
- 【講演者】クララ・ハン氏
- 【講演タイトル】"Household events: Police, neighborhood, and textures of violence
- 【使用言語】英語
- 【講師紹介】クララ・ハン(Clara Han)
ジョンズ・ホプキンス大学人類学科准教授。貧困、病、ケア、暴力、カタストロフと日常性、医療と公衆衛生といった主題のもと研究を行う。先日スペイン語にも翻訳された主著 Life in Debt: Times of Care and Violence in Neoliberal Chile (University of California Press, 2012) は、チリ、サンティアゴの低所得者居住区での長年のフィールドワークに基づき、ピノチェト軍政時代の負の余波が民主化以降の新自由主義社会に接続されるなか、軍政期を生きた世代と次世代の人々がその多重の「負債」(経済的負債、社会的負債、道徳的負債)を生きつつケアと再生を模索する様を描く。
近著 Seeing like a child: Inheriting the Korean War (Fordham University Press, 2020) では、朝鮮戦争を逃れて北朝鮮から韓国そして米国へと移住した両親を持つ自身の立場・記憶から、破局的出来事がいかに日常生活の微細な経験に浸透するかを、自伝と民族誌の交差という手法で記述した。
その他、Veena Dasとの共編 Living and Dying in the Contemporary World: A Compendium (University of California Press, 2015) などがある。
本セミナーでは、サンティアゴでの近年の調査に基づき、低所得者居住地区における警察の存在と暴力の複雑さについて、家庭という単位に焦点を当て、女性の観点から報告いただいた。
2022年7月17日
オンラインセミナー "Criminalización de defensoras indígenas en Guatemala"
- 【日時】2022年7月17日(日)午前8:00-10:00(日本時間)
- 【開催形態】Zoomによるオンライン開催
- 【講演者】アナ・ロペス氏
- 【講演タイトル】"Criminalización de defensoras indígenas en Guatemala"
アナ・ロペス氏はグアテマラ内戦とジェノサイドの生き証人であり、和平プロセスへ先住民女性として参加されてきました。苦学の末に弁護士資格を取得し、現在は人権活動家として、誠実な司法関係者への弾圧が引き続く危険な状況のもと、先住民女性の権利擁護に専心なさっています。
本セミナーでは、ご自身のサバイバーとしての個人史(解放の神学の司祭が率いる希望の地への移殖民、ジェノサイド戦略による徹底的な破壊の経験、抵抗の共同体を組織、軍の迫害への抵抗、和平プロセスへの先住民女性としての参加)と、先住民女性弁護士としての近年の活動の双方についてお話をうかがいました。 - 【コメンテーター】狐崎知己(専修大学)
- 【使用言語】スペイン語(通訳なし)
- 【共催】
◆科研費基盤研究(B)「ラテンアメリカにおける政治的カタストロフ後の日常的位相」(研究代表者:石田智恵、課題番号:18H03453)
◆早稲田ラテンアメリカ研究所
→イベントページ
2021年6月6日
日本ラテンアメリカ学会第42回定期大会(オンライン開催)
パネルD「政治暴力の後の日常性―終わりのない問いを生きる―」
- 石田智恵(早稲田大学)
「趣旨説明:アルゼンチン、失踪者の問いかけとその変化」 - 内藤順子(早稲田大学)
「軍政後のチリにおける社会運動:声を上げはじめた女性たち」 - 柴田修子(同志社大学)
「和平合意後のコロンビア:暴力のなかの日常を生きる」 - 狐崎知己(専修大学)
「低強度ジェノサイドに抗する先住民女性:グアテマラ・ソロラ県Oxlajuj EとVivamos Mejorの活動」 - 細谷広美(成蹊大学)
「紛争『後』の先住民コミュニティにおける『真実』とリアリティ:バルガス=リョサ委員会後のウチュラハイ村」 - [討論]池田光穂(大阪大学)
- 報告(日本ラテンアメリカ学会会報 No.135 より)
本パネルでは、1970年代以降内戦や強権体制下で政治的暴力を経験してきた現代のラテンアメリカ諸社会を対象に、和平や民主化等の移行期正義のプロセスや枠組の外で、暴力がどのような余波・後遺症(aftermath)として人々の現在の日常に存在しているかを、各自が対象とする地域や人々の個別の文脈のなかで捉えることを試みた。
まず石田からパネルの趣旨説明があり、続く石田自身の報告「アルゼンチン、失踪者の問いかけとその変化」では、アルゼンチンにおける人権運動の成熟と不正義の揺り戻しとも言える政策を受けた新たな動きとして、国家テロリズムの加害者の子供たちの公共空間への登場が取り上げられた。この新たな動きは、加害者との近さを引き受けることによって親密さと公共性を接続しつつ、現在の状況のなかで社会の「道徳的負債」に主体的に応えようとする実践として提示された。
内藤による第二報告「軍政後のチリにおける社会運動:声を上げはじめた女性たち」では、チリでここ数年大きな影響力を示しているフェミニズム運動を背景に、かつて軍政下で拷問を受けた女性たちが苦しみ続ける語り得ない痛みへのアプローチが模索された。チリ社会で民政移管後も続く家父長制・ジェンダー暴力に対する次世代の女性たちによる告発が、軍政を生き延びた女性たちにとって、終わることのない拷問の痛みに向き合う手がかりとなる可能性が示された。
柴田による第三報告「和平合意後のコロンビア:暴力のなかの日常を生きる」では、FARC―政府間の和平合意(2016年)以降に治安が悪化し社会不安が深刻化しているコロンビア太平洋岸の町トゥマコにおいて、紛争期から現在まで、FARCやパラミリタリー由来の暴力とコカ栽培などの違法経済活動の連動が地域の日常生活を不安定化していること、そうした外部からやってくる暴力と隣り合わせの、しばしば重なりもする人々の日常的現実が明らかにされた。
狐崎による第四報告「「低強度ジェノサイド」に抗するグアテマラ先住民女性たち」では、ジェノサイドの国家責任追及・犠牲者の補償がなされないまま、国家とあらゆるセクターの構造的・持続的腐敗(「略奪された国家」)のもとで「低強度ジェノサイド」(Ricardo Falla)が進んでいるとの現実の認識が示された。そしてそのような社会において尊厳ある生を回復・構築する手段として、報告者自身が現地で協力して実践してきた「生活改善アプローチ」が紹介され、その理論と現地における実践の様子、成果の一端が報告された。
細谷による第五報告「紛争「後」の先住民コミュニティにおける「真実」とリアリティ:バルガス=リョサ委員会後のウチュラハイ村」では、紛争下のペルーでアンデスの先住民が非先住民の記者たちをテロリストと誤って殺害したウチュラハイ事件をめぐる調査、裁判、公共の記憶の構築過程を分析し、先住民/非先住民、ケチュア語/スペイン語という関係性を基盤とした「社会界」の相違とその選択におけるヘゲモニー関係が論じられた。また、被害者と加害者、その家族がともに暮らす紛争「後」の日常における、「真実」とリアリティの複雑かつ重層的な関係が報告された。
討論者の池田からは、「過去の政治的暴力を解決済みのものとして扱うことはできない」というパネル全体を貫く問題意識の指摘や、各報告に関する個別の質問のほか、暴力についての語りを聞いてしまい「心が呪縛された」私たち研究者が、その暴力の現実を抑圧された人々の視点から論じ書くことの希望と責任についてのコメントがなされた。
フロアからの質問はZoomのチャットによって集められ、該当する報告者から口頭またはチャットにて応答がなされた。参加者は最も多い時で80名近く(登壇者・スタッフを含む)に上った。
2021年5月9日
合評会 池田光穂著『暴力の政治民族誌――現代マヤ先住民の経験と記憶』(大阪大学出版会、2020年)
2020年10月24日
オンラインセミナー「エルサルバドル:内戦後暴力の日常的位相」
- 講師:ジャネット・アギラール(中米大学世論調査研究所 [IUDOP/UCA] 前所長)
- コメンテーター:狐崎知己(専修大学)・石田智恵(早稲田大学)
- Zoom開催
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2018年3月18日
講演会「廃墟における主権:ペルー・アンデス内戦後の死をめぐる権力、統治、民衆」
- 講師:イサイアス・ロハス=ペレス(ラトガーズ大学)
- コメンテーター:松野明久(大阪大学)・大串和雄(東京大学)・細谷広美(成蹊大学)
- 会場:早稲田大学(早稲田キャンパス)7 号館 212 教室
- 共催:早稲田ラテンアメリカ研究所
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